僕と友達の嫁さんとバイアグラ
もうずいぶん前の話であるが、戯れにバイアグラを所持したことがある。
バイアグラなんて間違いなく必要のない年代であったはずだが、お試しで数回使用し、効果の絶大さに高笑いし、お守りのように最後の一錠を持ち歩いていた。
ある日、潰れた会社の仲の良かった社員とアルバイトが集まっての飲み会があった。
20人ほどだっただろうか。奥さん旦那さんも交え、フランクな空気の楽しい飲み会である。
程よく酔いも回り、新婚で奥さんも同席していた同僚に絡みつく。
「バイアグラ手に入れたから使ってみたけど、すっっっっっごいのっ!!」
誰がどうみても、遠目から薄目で見てもセクハラである。
参加者の半分以上は女性である。
控えめに言って最低の話題である。
それでも、当時の今よりはいくぶん社交的で、今と変わらずダメ人間と認知されていた僕が出した話題なので、
「またバカが頭の悪いお題を持ち出した」
ぐらいの感覚で大いに盛り上がってくれた。
特に女性陣からの質問攻めにビックリした記憶がある。
「強度は?」
「持続時間は?」
「回復にかかる時間は?」
まるで桃源郷のような質問攻めに辟易としたものだ。
男性陣にとってももちろん深刻な問題ではあるが、全く同じ、イヤ、それ以上に女性陣にとって深刻な問題であることに気が付かされた。
わちゃわちゃと楽しく質疑応答を繰り返した結びとして、絡みついた同僚に問いかける。
「手元に1錠あるけど使う??」
「必要になったらお願いします」
と渇いた笑いで返される。
当時、僕の周りにはデキ婚や結婚してすぐ「子どもが出来た」報告を受けることが多く、新婚とは言え、1年近くオメデタの話を聞かなかった同僚に対して、心配して投げかけた言葉でもあった。
誰がどうみても最低である。
いや、その同僚の結婚式に参加したのだが、思ったよりいいところのボンボンだったらしく、規模は大きいわ親戚も大量におるわで、一人っ子だと言っていたのに大丈夫かなと、非常に心配しての暴挙だったわけである。
言い訳しても最低さは変わらないが。
兎にも角にも飲み会は楽しく終了し、駅までそぞろ歩き。
駅前でふんわりと広がって最後の雑談を楽しむ僕。
ふっと会話が途切れ一人になった瞬間である。
先ほどの同僚の奥さんが、小走りにかけよってくる。
「PONさん!さっきのお薬…もらってもいいですか!!」
辛うじて平静を保ちつつ、バッグからバイアグラを取り出し嫁ちゃんの手に握らせる。
同僚は輪の遠くの方で背を向けている。
きっとずっと緊張しながらタイミングを計っていたのだろう。
安堵の表情を浮かべながら頭を下げて走り去る嫁ちゃん。
「がんばってねー」
声をかけたはいいが、なにを頑張らされるつもりだったのだろう。まぁ、ナニを頑張るしかないわけだが。
先に話した通り、つぶれた会社の飲み会だったので、その後なんとなく疎遠になってしまった。
年に一度、少人数で集まって飲むことはあったが、それもここ数年は全くない。
なんとなくラインの「知り合いかも?」欄を見たら、同僚が幼稚園生ぐらいの子どもを抱えた姿で写っていた。
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